Vernon Lee (Violet Paget)

ヘンリー・ジェイムズ

ヘンリー・ジェイムズ (Henry James)

henry james

 1843~1916年。『ねじの回転』(The Turn of the Screw)、『デイジー・ミラー』(Daisy Miller)、『鳩の翼』(The Wings of the Dove)などの小説で知られるアメリカ生まれの小説家。新大陸(アメリカ)と旧大陸(ヨーロッパ)の対立をテーマとした、いわゆる「国際テーマ」やゴースト・ストーリー、そして芸術家を主人公とした作品で知られる。1890年代にはロンドンで劇作に挑戦するが失敗。小説に回帰したのちは、難解な長編小説を発表した。のちにイギリスに帰化。哲学者・心理学者のウィリアム・ジェイムズの弟。
 ヴァーノン・リーはヘンリー・ジェイムズの小説を愛し、'Lady Tal'などの作品では、明らかに彼の作品を模倣している。実際、リーは自作を"humble imitation of Henry James"と述べている。
 ヴァーノン・リーは処女長編Miss Brownヘンリー・ジェイムズに捧げた。リーは母親宛ての書簡において、"(James) takes a most paternal interest in me as a novelist, says that Miss Brown is a very good title, and that he will do all in his power to push it on."と書いている。一方、1884年10月21日付けの手紙で、ジェイムズは自分は本を捧げられるに値しないと述べている。また、ジェイムズはリーに"Cool first―write afterwards. Morality is hot―but art is icy."と助言したりしている。この小説とジェイムズのThe Portrait of a Ladyの類似を指摘する研究者もいる。(Catherine Maxwell ed, Vernon Lee: Decadence, Ethics, Aesthetics, P.53.)ともに、ヒロインが望まない結婚に踏み切る話である。Laurel Brakeは『ミス・ブラウン』とヘンリー・ジェイムズThe Portrait of a Ladyを比較し、"the second half of Miss Brown"を"an alternative 'Portrait of a Lady'”であるとしている。
 しかし、ジェイムズにMiss Brownを酷評されたことから関係が悪化する。ジェイムズはMiss Brownについて、「不完全だが興味深い本」としつつも、文体の欠点などを指摘している。グレイス・ノートン宛の1887年1月25日付けの手紙では、リーのことを「巧妙でまぬけで、趣味が悪い」と書いている。サラ・バトラー・ウィスター宛の1887年2月27日の手紙では、リーのことを「とても醜く論争的で、身内のごとく振舞うが、ここフィレンツェでしか見られない心の持ち主だ」としている。(参考『ヘンリー・ジェイムズ事典』)
 Vanitas収録の短編’Lady Tal’には、ヘンリー・ジェイムズをモデルにしたと思われる小説家が登場する。’Lady Tal’は、ヴァーノン・リーとヘンリー・ジェイムズMiss Brownをめぐる関係を下敷きにして書いたと思われる小説。この小説に腹をたてたヘンリー・ジェイムズは以後ヴァ―ノン・リーとの間に距離を置くようになった。ジェイムズは兄ウィリアム宛に次のような手紙を書いている。

 she (Vernon Lee) has lately, as I am told (in a volume of tales called Vanitas which I haven't read) directed a kind of satire of a flagrant & markedly "saucy" kind at me(!!) exactly the sort of thing she has repeatedly done to others (her booksーfictionsーare a tissue of personalities of the hideous roman a clef kind) & particularly impudent & blackguardly sort of thing to do to a friend & one who has treated her with such particular consideration as I have.

 同じくVanitasに収録された'The Worldly Woman'も'Lady Tal'によく似た作品である。二人の登場人物GreenleafとMiss Floddenはヘンリー・ジェイムズPrincess Casamassimasについて語り合う。Miss Floddenはこの小説のPrincessについて次のように述べる。"The woman in the book may be intended to be wicked; but she needn't have been so in real life. Not at all wicked. She's merely a clever woman who is bored by society, and who wants to know about a lot of things and people. Heaps of women want to know about things because they're bored, but it's not always about nice things and nice people, as in the case of the Princess."

Roderick Hudson

 Burdet Gardnerによれば、ヘンリー・ジェイムズ初期の唯美主義小説『ロデリック・ハドソン』(Roderick Hudson, 1875)に登場するChristina Lightは、若い頃のヴァーノン・リーをモデルにしており、リーがジェイムズをモデルにした人物が登場する小説を執筆したのは、そのことへの意趣返しの意味があったという。
 『ことばの美学』では短篇「死者の祭壇」の導入部分をジェイムズの中で最も美しい部分であるとし、逆に『ねじの回転』ではラスキンの言う「浸透性の想像力」が欠如している、としている。
 エッセイ集Gospels of Anarchyの"The Economic Parasitism of Women"では、ジェイムズの長編小説Bostoniansの登場人物の"And would you condemn us to remain mere lovely baubles?"というセリフを引用している。
 ヘンリー・ジェイムズ未完の長編小説『過去の感覚』(The Sense of the Past)はヴァーノン・リーとの関係において興味深い作品である。ロンドンの古い屋敷で、主人公は自分と同じ名前の人物の肖像画を見る。それをきっかけに主人公は過去にタイムスリップする。ヴァーノン・リーの短篇'Amour Dure'にも似たストーリーで、リーとジェイムズの過去に対する意識を比較するのも面白い。つまり、肖像画を契機に時間を跳び越える、という話であり、時間の要素を内包する絵画を好んだリーらしい話と言える。
 なお、ヘンリー・ジェイムズはヴァーノン・リーの本を計16冊所有していたという。リーの兄ユージーンはヘンリー・ジェイムズが自身のThe Aspern Papersを送ってくれたことを手紙で伝えている。(Complete Letters Volume 2, P.477.)

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